会長サマと、夢と恋。
……正直、岸会長との話を聞いてから、わたしはこの人に会いたくなくて。
なるべく話さないように、二人きりにならないようにと思って過ごしてきたのに、まさか長沢先輩のほうから来るなんて……!
「……な、なんですか?」
「そんなに怖い顔しなくてもいいじゃない。……これ、岸くんのこと?」
「‼︎ いや、違っ」
「あなた、岸くんをこんな目で見てるのね」
あわててノートを隠すけど、バッチリ読まれてしまったみたいで焦る。
「……あの、何か用ですか」
「あはは、その言い方。一応わたし、先輩なんだけど」
「……すみません……」
長沢先輩が何をしに来たのか、何を考えているのかわからない。
「……今日の会長あいさつのアレ。わざと?」
長沢先輩が言っているのはきっと、終業式で大声を出して会長あいさつを止めてしまったことだ。
「あれは、わざとじゃないです。つい、」
『岸会長と長沢先輩が付き合ってる』なんてウワサのウワサを聞いて、思わず大声で否定してしまった。
だって、長沢先輩は岸会長を傷つけた張本人なんだから……。
「あのあと岸くん、ずいぶん機嫌悪そうだったけど」
「え……」
会長、やっぱりわたしだって気づいていたのかな。だとしたら、話をジャマされて怒っちゃったよね。
……焦る気持ちを、グッとこらえる。
長沢先輩の言葉でうろたえる姿を見せたくない、って思ったから。
黙っていると、長沢先輩が言葉を続けた。
「橋本さん、岸くんのことが好きなのね」
「……‼︎」