無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
……そんなとき、トントンと脱衣所のドアを叩く音が聞こえた。
「……はい」
「凛李……?」
名前を呼ばれただけなのに、その声に呼ばれると胸の奥がギュッと締めつけられるのはなぜだろうーー。
「そうだよ」と答える私に、善は「大丈夫?」と投げかけてきた。
「いや、次入ろうと思って待ってたらあまりにも遅いから……。もしかして、のぼせた?」
「……そんな感じ」
「マジ?」
「長湯しちゃって……休めば落ちつくと思うから、もう少しだけ待ってて……」
「いや、待ってて」
ドア越しにしゃべる私たち。
最初に待っててと言ったのは私なのに、なぜか善にも言われてしまい、善の足音が遠のくのがわかった。
ーーそして、近づいてくる足音。
「開けるよ」
その声が聞こえたあとすぐに開かれた脱衣所のスライドドア。
横たわる私は頑張って見上げ……そこには、コップを持った善がいた。