無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
ブラのひも……⁉︎
自分の肩を確認すると、がっつりと肩ひもが見えている。
この状態でさっきまでみんなで話してたなんて……最悪だ。
小声で「ありがと……」とつぶやき、私は肩ひもをささっと直す。
この場にいるのが恥ずかしくなってしまい、私は今度こそ柊木善へと背中を向けた。
「これから大丈夫?」
「……なにが?」
含みを持ったその言葉に、私は思わず足を止める。
「一つ屋根の下で男と一緒に住むのに、危機感まったくないなと思って」
柊木善は、一瞬ニヤッと笑った気がした。
いや、気のせいかもしれない。
ずっと無表情の彼が笑うはずがない。
「余計なお世話です」
私はそう言い捨て、柊木善を置いて階段を降りた。
なんだろう、無性にイライラする……!
誰かに腹が立ったりすることはなかなかないけど、柊木善だけは言動すべてが癇にさわる。
親切心で言ってくれたのかもしれないけど……!
柊木善に言われた言葉が、しばらく経っても頭の中にこびりついていた……。