無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
私は、少し大げさに「湯当たりしちゃって……たまたま気づいてくれた善が麦茶を飲ませてくれたの」と、もう気持ち悪さはないものの、具合が悪い雰囲気を漂わせながらそう言った。
「あら、そうだったの⁉︎ 大丈夫⁉︎」
「善のおかげでだいぶ楽になったよ。もう部屋に戻るね」
「大丈夫なの? 善くん、部屋まで凛李のこと頼んでもいいかしら?」
「もちろんです」
「ありがとうね。それと、看病もしてくれてありがとう」
お母さんは信じてくれたのか、そう言って脱衣所に洗濯物を置いてその場からいなくなった。
私もだいぶ良くなったので、とりあえずゆっくりと起きて立ち上がった。
善は心配して私の腕をつかみ支えてくれた。
部屋に戻るまでずっと私の背中に手を添えてくれた善は、私が部屋の中に入る瞬間、「あ、ちょっと待ってて」となにかを思い出したのか急いで階段を降りていってしまった。
なんだろう……?
そう思いながら善を待っていると……小走りで戻ってきた善の手にはドライヤーがあった。
「俺が乾かすよ」
私の髪がまだ乾いていないことに気づいてわざわざ持ってきてくれたんだと感心しているのも束の間……まさかの一言。