無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
「自分で乾かせるから大丈夫」
「まだフラフラするでしょ」
「してないよ、もう大丈夫」
私はそう言いながら善の手からドライヤーを取ろうとするーーが、善がドライヤーを遠ざけたため取れなかった。
「貸して」
「そんなに俺にやってほしくない?」
「……別にそういうわけじゃないけど……ただ自分でできるから、やってもらわなくても大丈夫」
「遠慮しなくてもいいよ。俺がやってあげる」
なになになに……?
なんでそんなにドライヤーをやりたがるの……?
こっちは醜態をさらして恥ずかしいうえに、密着度高めで口移しまでされてこれ以上ドキドキしたら心臓が口から飛び出てしまうんじゃないかと不安でしょうがないっていうのに……っ。
それに加えて髪の毛を触られて乾かしてもらうなんてレベルが高いことを恋愛初心者の私ができるはずないじゃない……。
「どうしても俺じゃいやなの?」
ーーそれなのに、この男ときたら子犬のようなうるっとした瞳で私のことを見つめてくる。
声色も甘えるようで……その声が不覚にも私の母性をくすぐる。