無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
「私にとってはなかなかな試練なんだけど……」
「俺にとっては幸せすぎるご褒美なんだけど」
善は私の言い方をマネして、目を細め子犬のような笑顔を私に向けてくる。
結局のところ心の中で何度も愚痴をこぼしてみるけれど、善の些細な言動で簡単に気持ちが揺らいでしまう。
……こればかりはどんなに意思を強く持ったとしても、善を目の前にすると無理なのだ。
「……わかった」
私は小さく言葉を漏らしながら、善に顔を近づける。
しかし、善の目力がすごすぎて……キスどころじゃない。
「目は閉じてほしいんですけど……」
「なんで? 初めてキスしてくれるかわいい凛李の顔を見ちゃダメなの?」
「……だ、ダメっ。目を閉じてくれないならキスしないよ」
「えー……なら仕方ないかぁ……はい、どうぞ」と、善は渋々目を閉じてくれた。