無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
ドアップの善の顔を見るということに限界がきた私。
唇があと少しで触れるところで目を閉じてしまった……。
そのまま勘で善の顔へと近づくが……間違って善の鼻に私の唇が当たってしまう。
恥ずかしすぎて、私はすぐに目を開いた。
同じタイミングで善も目を開いたため、私たちは至近距離で目が合った。
実際がどうなのかはわからないけど……。
目が合った瞬間、時間が少しだけ止まった気がした。
「惜しかったな」
善はそう言って前かがみになっている私の後頭部を押さえ、そのまま自分のほうへと引き寄せる。
私たちの唇は深く重なり……離れたあと、またすぐに重なった。
はぁ……。
私は心の中でため息をつく。
もう善を好きになる前の自分に戻ることはできないんだと、なぜだかこのときに悟った。
勉強にしか興味がなくて、自分に自信なんて持てなかった。
静かに地味に生きていければいいと思ってた。
……恋愛なんて、必要ないと思ってた。