無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

「善……っ」



女の子は甘えたような猫なで声を出す。

寝転ぶ柊木善の上にまたがる女の子は、彼にキスをしたあとそのまま首筋に顔を埋めた。


見てはいけないものを見てしまった……。



私はその場からとにかく逃げるように走った。

「廊下は走るなー」と先生からの注意も無視するほど、無我夢中で走った。


理科室に入り席に着く。

息が切れ、動悸が激しくなる。

その理由が走ったからなのか、それとも……。



授業中もその光景が頭から離れず、その1日は授業に集中できなかった。


結局、柊木善は遊び人なの?

彼が遊んでいるところで私になんの被害もないのに、心の隅でショックを受けている自分がいる。


少女漫画や恋愛小説など一切読んだことがない私にとって、男女が触れ合う行為の知識がない。

ドラマも基本的に見ないので、この目で見ることさえ生まれて初めてだ。

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