無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
たいしたことないかのように笑いながら話す善。
しかし、善の左手の親指と人差し指に血がにじんだ包帯がぐるぐる巻きにされている。
それを見る限り、たいしたことないわけではなさそうだ。
「ちゃんと社員や店長には言ったか?」
「もちろんです。凛李さんたちにも心配をかけてしまい申し訳ないです」
「そんなの家族のようなものなんだから当たり前だろ。謝ることじゃない。なにか不便なことがあったらいつでも言いなさい」
「はい、ありがとうございます」
お父さんはそれだけ言って、自分の部屋へと行った。
2人になったことを確認し、私は一歩善へと近づいた。
「本当に大丈夫なの? まだ血が止まってないんじゃないの?」
「大丈夫だよ。ちょっと切っちゃっただけだし」
「……でも……」
本気で心配する私をよそに、善は目線を私に合わせてきた。