無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

「凛李」



……2人でいるときにしか出さない、善の甘い声。
その声で名前を呼ばれたら……振り向かずにはいられない。

正直、自分の名前がきらいだった。

凛々しくもない、美しくもない、私には似つかわしくない名前。
この年になっても、どうしてこの名前がつけられたんだろうと思うことがある。
それほど……この名前がきらいだった。

不思議と善に呼ばれるときだけはこの名前でよかったと思える。
善の声に乗る"凛李"という言葉が、愛おしい。

今まで変化のなかった私の生活は、善によって少しずつ変わってきている。

今までどおりでいい。
平凡で、静かに勉強ができればいい。
人並みの恋愛もおしゃれもメイクも……私には無縁のもの。

そう思っていたのに、善といることで勉強以外のことにも興味を持つようになった。

ーー世界が広がった。

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