無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

私が振り返ると、善はゆっくりと私との距離を縮めてきた。
2人の顔が近づく……。
その距離からキスだとわかり、私は思わず顔をそらした。

ここは玄関。
いつ誰に見られてもおかしくない。

しかし、私の腰を右手で引き寄せた善は、あっという間に私の唇を奪った。



「……!」



一瞬触れるだけで終わったけど、キスに変わりない。

突然のできごとに固まる私と、まるで"なに?"とでも言いたげな顔で私を見下ろす善。
腰にはまだ善の手が触れているため、体は密着したまま。



「誰かに見られたらどうするの……っ」



小声で話す私の声が聞こえづらかったのか、再びかがんで私の顔を覗きこんでくる善。



「キスはいいよって昨日言ってた」

「それは、あのときならいいよって意味であって、いつでもいいよってわけじゃ……」

「無理」

「む、無理?」



禁止令を出したときはすんなりと受け入れてくれたのに、今の善はまるで駄々をこねる子どものよう。
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