無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
「……凛李の恥ずかしがる顔を見たかったんだよ」
「なら大成功でしょ? 早く部屋に帰らせてよ……」
「挑発してきたのは凛李じゃん」
「挑発……なんか、してない」
すると、善は私の耳にフッと息をかけた。
私はくすぐったくて、思わず「ひゃ……っ」と声を出してしまった。
「なっ、に、するの……っ」
私は脱衣所の外に誰かいたときに聞こえないようになるべく小さく話す。
「……こ、こういうのはしないって約束でしょ?」
「あー、そっか」
善はそう言いながら、今度は耳にキスをしてきた。
私はとっさにキスされた右耳を押さえ、体を横向きにして善を横目で睨みつける。
「だ、だから……っ」
「キスは、いいんでしょ」
「……」
「昨日言ったこと、忘れたの?」
……たしかに、キスならしていいと言った。
言っけど……それは、あのときの流れで出た言葉であって……。