無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

自宅学習だけではどうしても勉強できる範囲が限られていて、最近勉強への意欲が薄くなっていた。
そんなときにお母さんから冬期講習をすすめられて、話し合った結果、お試しで通うことになったというわけだ。

塾ということで、日によって帰りが遅くなるときもある。
心配性なお母さんとお父さんはその点で悩んでいた。
……しかし、塾の場所がたまたま善が働くカフェの近くにあることを知り、"善のバイトの日と被ったらいっしょに帰ってくること"という約束を守れば通ってもいいと言われた。

一瞬付き合ってることがバレてるのではないかと焦ったけど、居候している善のことを信頼しているからこそ頼んでいるんだということは聞かなくてもわかった。

……むしろ、私もうれしかった。
遊びに行くわけじゃないのはわかっている。
こういう休みのときこそ追い込みをかけないと、絶対に後悔する。

それでも、私の中の善という存在は確実に大きくなっていた。

今までは寝ても覚めても勉強で、それ以外のことには興味がなかった。
楽しみがなくてもがんばる理由がなくてもがんばれた。
……けど、善といる楽しさを知ってしまったから。
恋する豊かさを知ってしまったから。
もうーー前の私には戻れない。

善といっしょに帰れるんだと思ったら、もっと勉強をがんばれそう。
自然と善が私の背中を押してくれる。

< 190 / 390 >

この作品をシェア

pagetop