無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

……これを取らないほど、私な性格はねじ曲がっていない。
席から離れ筆箱を拾い、それを静かにとなりのつくえに置くと、「ありがとうございます」と言われた。

任務を終えホッとし、「いえ……」とつぶやくように言ってから席についた私に次に降りかかってきたのは……予想外の言葉だった。



「……若菜?」



どうして私の名前を……?
そう思って恐る恐るとなりを見るとーーそこには、小学校6年生のときに好きだった人がいた。

秦 真之介(はた しんのすけ)。
私が恋をすることをやめたきっかけを作った張本人。
秦くんと呼んでいたのを、今思い出した。

真っ黒な癖のない最近流行りのマッシュヘアに、薄い黒縁のめがねをかけている。
髪型はおしゃれになっているが、黒縁のめがねをしているのは変わらない。
……面影はあるけど、見た目があきらかに少年から青年になっていて、たぶん道ですれ違ったとしても気づかないだろう。



「人違いじゃないですか?」


< 192 / 390 >

この作品をシェア

pagetop