無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
関わりたくない、関わる必要もない。
その思いが強くて、私は考えることもなくそう口にしていた。
ここには勉強をしに来ているんだ。
ましてやもう二度と会いたくないと思っていた人と話したくもない。
……しかしそれからというものの、秦くんはしつこく私に話しかけてきた。
問題を解く時間になると、「ここわからないんだけど」と言って私のノートを覗き込んできたり、お昼休みの時間にはお母さんが作ってくれたお弁当を静かに1人で食べたいのに「俺もここで食べよ」と言ってとなりで食べたり……。
最悪なことに、誰よりも早く支度を終えて教室を出た私のあとを秦くんは追いかけてきた。
それでも無視をし続ける私。
それなのに、秦くんは塾を出てもなぜか隣にピタッとくっついてくる。
「なんなんですか……っ⁉︎」
「あ、やっとしゃべった」
あまりのしつこさに痺れを切らした私に対して、秦くんは目を細めて嬉しそうに笑う。
時刻は夕方の4時。
もうすぐで日が暮れ始める時間。