無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
「秦真之介! 俺たち小学校一緒だったんだよ? 覚えてない? それに、5、6年のときは同じクラスでそれなりに仲よくてさ……」
この人の記憶の中では私はそんな風に残っているのかと思うとおどろきを隠せない。
たしかに仲がよかった。
勉強も好きだし気が合った。
だから……好きだった、もっと仲良くなりたかった。
そのころの私はそれなりにオシャレに興味があって気を使っていたけど、でも、あの日の秦くんのおかげで私は変わってしまった。
「そうだったっけ? 小学校のころのことあんまり覚えてないの」
私の素っ気ない返事に、なぜかまた秦くんはニコニコと笑う。
私があの日自分の言葉を聞いたことも、私が好きだったことも知らないんだろう。
……だとしても、その笑顔に腹が立ってしまう。
「俺さ、中学のときに親が離婚して隣の県に引っ越したんだけど、高校はこっちに来たかったから今一人暮らししてるんだ」