無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
秦くんは、会っていなかった4年間のできごとを聞いてもいないのに勝手に話してくる。
「最寄駅ここなの? いっしょだ」
「じゃあ、さよなら」
「いや、方向もいっしょなんだけど」
てっきりついてこられてるのかと思ったら、偶然にも帰り道がいっしょで……結局、私は自分の家に着いてしまった。
まだ秦くんはとなりにいる。
「あの……」
「ちなみに住んでるのここなんだよね」
そう言って、私の家の目の前のアパートを指さす秦くん。
血の気が引くーー。
そんなことある?
中学のときはお互いの家なんて知らないし、ただの偶然だということはわかる。
まさか、私の家の前のアパートに住んでいたなんて……どうして今まで気づかなかったんだろう。
……心が落ちつかない。
ザワザワする。気持ち悪い……今すぐ家の中に入りたい。
「じゃあ、私はこれで……」
今すぐにこの場から離れたくて、私は秦くんを見ることもなく家の門を開けたところで……ちょうどバイトへ行く善が家から出てきた。