無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
「おかえり」
「……ただいま」
秦くんももう自分の家へと帰ったはず。
善にこのトラウマのことは知られたくない……あまりにも恥ずかしい過去だから。
今の私を好きになってくれた善を幻滅させたくない。
「なんか俺らのことジッと見てるやついる」
善のその言葉で後ろを振り返ると、私たちのほうを見ておどろいた様子の秦くんが門の前に立っていた。
「なんで柊木善が若菜の家から出てくるの……?」
そして、なぜか秦くんの口から善の名前が出た。
どういうこと?
2人は知り合いなの……?
「善、秦くんのこと知ってるの?」
「誰それ、知らない」
善は少しイラついているのか、いつもより声を低くしてそう答えた。
そして、私を通り過ぎて門を開け……秦くんの目の前まで向かった。