無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
こんなやつにケンカをふっかけた自分がバカだった。
もう話しても無駄だ。
私は柊木善の腕を振りほどき、早くこの部屋から出ようとドアノブに手をかけたその瞬間……。
引き戸のドアがそれ以上開かないように、柊木善の手でドアを押さえられてしまった。
背中越しに……彼の気配を近くで感じる。
「言いたいことだけ言って逃げるんだ?」
「……そんな、ことない……」
私の耳に息がかかりくすぐったい。
なんなのこの状況……っ。
早くここからいなくなりたい……。
「つまりさ」
柊木善の柔らかく甘い声が私の胸の奥に響く。
「おまえともキスできるってこと」
この人は、私の耳元でなにを言ってるんだ……っ。
腹が立っているはずなのに私の耳が熱を持つのがいやでもわかる。