無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
上目遣い、首かしげ、甘えた声、抱きしめられている、善の部屋……。
これらすべての条件がそろってしまったことで、あざとさスーパーマックスデラックスパワーが働き、私の鼓動は未だかつてないほどに早く動いている。
私は……泣く泣く秦くんとのことを話すことにした。
小学校のときに好きだったこと、悪口を言われたこと、そのせいで恋愛を諦めたこと、何年も会ってなかったのに今日塾でたまたまいっしょだったこと……。
「それで、偶然目の前のアパートにそいつが住んでいたと」
「そういうことです」
包み隠さず全部を話したのに、善の機嫌は一向に直らない。
「なんか怒ってる……?」
「そいつのせいで、恋なんてしないって思ったってことだよね」
「うん」
「そいつの影響ってことだよね」
「……そうだけど、今はもう気にしてないよ」
「……」
「きっかけは秦くんだったかもしれないけど、今は私がしたいことをしてる」