無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

「いやだ、って言ったら?」

「キスしたいから、行かせない」



だんだんと声が近づいてくる。
そのたびに心拍数が上がる。

そもそも私に選択権なんてないじゃない。
私の意見を聞いているようで聞いていないのと同じ。
いつだって善の甘い波にのまれてしまったら、抜け出すことはできないんだ……。

手首をつかまれ、いとも簡単に善のほうを向かされてしまう。
私の顔を見て、鼻で笑う失礼な善。



「なんで口とがらせてんの?」

「いつも善の思惑どおりに進むから悔しくて」

「いやならいやって言ってよ。好きなものを言えるようにするのと同じくらい、きらいなものをきらいって言うことも大切だよ」



べつにきらいだから言ったわけじゃないのに……。
善が”待て”と言えば待ってしまう自分が悔しくて出た言葉だった。

どうやら善もそれはわかっているみたいで、ニヤニヤしながら私のことを見下ろす。



「簡単な女だって思ってる?」

「まさか。寄ってくるやつらは俺のことを大して知らないのに好き好き言ってくるのばっかりだったから。凛李は予想外の反応をするからおもしろい」

「おもしろいって、はじめて言われた」

「じゃあ、もう1つもらってもいい?」

「もう1つってな……っ、キャッ……」

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