無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
私の言葉に、さっきまでの負のオーラがうそだったかのようにすぐに顔を上げて、今度は目を輝かせる善。
善の周りにキラキラしてる星が見える。
「なら、こういうキスも必要不可欠だよ」
そう言って、伸びてきた善の指は私の唇をなぞった。
善が必要だというなら仕方ない……よね。
そういうものなんだったら、私がついていくしかない……。
毎日のようにされたらとてもじゃないけど瀕死状態になってしまうから、どうか頻繁ではありませんように……と、なぞに心の中で祈る私。
「凛李」
名前を呼ばれ、熱を帯びた善の瞳が私を捉えて離さない。
「もっと俺に翻弄されてよ」
「十分、翻弄されてるよ」
「俺のことしか考えられないくらい?」
「うん」
「はぁ……もう、ほんと……こっちが翻弄されっぱなしな気がする」
最後の言葉はため息混じりに善が小さくつぶやいた。
……善が意外にもヤキモチ妬きで心配性なんだと今日知った。
こんな善を知っているのは私だけ……。
そう思ったら、特別な感じがして、自分自身のことも好きになれそうな気がした。
ーーこの日秦くんという存在をすっかり忘れていたことを、私は後悔した。