無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
「小学生のときの言った言葉はあんまり覚えてないけど、本心で言ったわけじゃないんだ。まだ心が未熟で恥ずかしくて、俺が若菜を好きだってバレないためにウソをついただけなんだよ」
「……そんなこと、今さら言われても意味ない」
「そうだよな。けど、小学生のとき正直若菜のこといいなと思ってたよ」
傷つけた側の本人は悪口を言ったことすら忘れていたのに、いいなと思ってただなんて言われてもなんとも思わない。
無の感情だ。
そのときの悪口がうそだったのか本心だったのかは、もはや重要じゃない。
あのときに悪口を聞いてしまった私、悪口を言ってしまった秦くん……それがすべてなんだ。
「でもそれって、俺が若菜の人生を変えたってことだよね」
「……え?」
「若菜の中で、俺の存在が大きいってことだろ?」
どこまでも自分の都合がいいようにしか考えなくて、むしろ尊敬の念を抱く。