無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

「とりあえず、この手離してくれない?」



あえてトゲのある言い方にしたのに、秦くんは笑みを浮かべて手を離そうとしない。
振りほどこうと腕を引っ張るけど、男の人の力に敵うはずがない。

ーーそんなとき、女の子たちのはしゃぐ声がだんだんと近づいてきた。
女の子数人が1人の男の人を囲んでキャッキャと楽しそうに話している。
その団体は前から歩いてきた。

女の子たちの中心には……善が立っていた。

向こうも途中から私と秦くんだと気づいたようで、女の子たちをかきわけて小走りでこっちに走ってきた。



「なにしてんの?」



善は私の手首をつかむ秦くんの腕を無理やりはがし、私のことを自分の体へと引き寄せた。
低い声を聞いて、いらだっているんだとわかる。
文化祭で知らない男の子たちに絡まれているところを助けてくれたときと同じだ。

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