無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

「そもそも、柊木こそただのいとこなのになんで口を挟んでくるわけ?」

「……」

「王子様きどってる感じ?」



秦くんは善を怒らせようとしているのか、この前のように少し笑いながらあおってくる。



「大事だから」



そんな秦くんのあおりには乗らず、善ははっきりとそう言い切った。
今、善に抱きしめられている状態で顔が見えなくて本当によかったと思う。
……涙が目に浮かんだ。

私との約束を守りつつ、善が"大事"だという言葉を言ってくれて、うれしい反面切なくもなってしまった。



「もしかして、若菜のこと好きなの?」



善をあざ笑う秦くん。

もしかしたら、秦くんは善と私の関係に気づいているのかもしれない。
それであえて、善を怒らせようとしたのかも……。

だとしたら、これが続くなんて耐えられない。
私は締めつけられるように胸が苦しくなった。

善は本当のことを言って私のことを守ってくれているのに、私は自分のために隠したまま。
本当にこのままでいいの……?
私ばかり守ってもらってて、善のことも守ってあげなきゃーー。

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