無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

「でも、俺は若菜のことあきらめないよ」

「……は?」

「だって、どう考えたって柊木と若菜の住む世界はちがうだろ。若菜は俺といたほうが絶対に幸せになれるし、若菜の中にはずっと俺がいたんだし」

「すごい妄想力だな」

「妄想かどうかは今後わかると思うよ。いずれ、俺のほうがいいって気づくときがくるから」



さっきあれだけいやな思いをしたって話したのに、どうしてまだこんなことが言えるんだろう……。
私は善と前を向いて歩いているのに、どうして邪魔をしようとするの……?



「私と善の住む世界がちがうことはわかってる。だからこそ、学べることも楽しいこともたくさんあるの。私たちのことを全部知ったように話すのはやめて」

「……なるほど、こんなに反論できるほど強くなったのも柊木と付き合ってるからなんだね」

「善のおかげで自分の意見をちゃんと言えるようになったの」



私をいい方向に導いてくれたのは、秦くんじゃない、善なの。

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