無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
「お昼スパゲッティ作ろうと思うんだけど食べる?」
「……食べる」
柊木善のあざとい毒牙にかからないように、私は即座に話題を変えた。
本をローテーブルに置き、キッチンへ向かう。
柊木善は私と入れ替わるようにリビングへ向かうとソファに横になった。
こういうときは完全に弟って感じがするんだよなぁ。
私は食材を冷蔵庫から取り出し、さっそく作り始めた。
すると、柊木善が飲み物を取りにキッチンに来た。
私はミートソースを作るために玉ねぎをみじん切りにしていたため、目が染みて痛いモード真っ最中。
涙が出てきて視界がぼやける。
自分のひじで涙を拭うけどまだ染みる……。
「泣いてんの?」と背後から柊木善の心配そうな声がした。
「玉ねぎが目に染みて……悪いんだけどティッシュとってくれる?」
包丁を一旦置いて手を洗おうとする。
しかし、柊木善に手首をつかまれて、そのまま向かい合う形になった。
「大号泣」と、小さく笑われ……そして、指で涙を拭いてくれた。