無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
「今大学生のいとこが時間ができたからって家庭教師してくれることになったんだ。だから、若菜とももう話すことは本当になくなるかもね」
「そうだね……」
「再会できてよかったよ。また、会ったらよろしく。じゃあ、お互い春期講習がんばろ!」
「うん、じゃあね」
秦くんは手を振りながら先に教室を出ていった。
まさか、秦くんとこうして話せる日がくるなんて思ってなかった。
今日はいやな気持ちもなく話せた気がする。
秦くんへのモヤモヤとした気持ちも消えていったーー。
話も終わり塾の入っているビルから出ると……外には善の姿があった。
今日はバイトじゃないはずなのに、どうして……?
「なんでいるの?」
ガードレールに寄りかかる善にかけ寄ると、善は私の頭を優しくなでた。
「なんとなく」
「なんとなくって……」
「ウソ。会いたくて」
「……っ」
「会って、今すぐ抱きしめたかった」