無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
「そういえば、善って兄弟いるの……?」
「ひとりっ子」
「じゃあ、ご両親の愛を一身に受けて育ったんだね」
「んー……でも、父さんは仕事で忙しかったからあんまり遊んでもらった記憶ない」
「あ、それは私もいっしょだ」
「たしかに俺もいっしょに住んでるのに、凛李のお父さんとなかなか会わないな」
「ちょうど善がバイトに行ってるときに帰ってきてご飯食べてることが多いからかな。あとはもう自分の部屋で本読んだり仕事してるみたい」
「たしかに俺の父さんも仕事でほとんど家にいなくて、父さんとの記憶って少ないな」
家族のために一生懸命働いてくれているのはわかるから文句があるわけじゃないんだけど、たまには家族との時間を作ってほしいなと思ったことがある。
もちろん大型連休のときは旅行に連れて行ってくれたり出かけたりしたことがある。
だけど、子どもながらになんでもない休日に公園へ行ったり外食に行ったり……そんなちょっとしたことをしてみたかった。