無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
善からのさらなる提案。
「すぐあそこに見える公園に早く着いたほうが勝ち。負けた人はお願いをなんでも聞く。どう?」
「私が不利だと思うんだけど」
「ハンデで5秒あげる」
まさか自分のアドバイスのせいで自分の首を絞めることになるとは……。
さっきの発言をキャンセルできたらいいのにと心の底からなげいた。
どんな状況だとしても、挑戦を挑まれたらさすがにスルーはできない。
負けたとしても、そんな無理難題なお願いをしてくるはずがない。
私は意を決して、その勝負に乗った。
自分の「よーいどん!」でスタートし、無我夢中で公園へと走る。
5秒のハンデをもらっていたとしても勝てるはずがなくーー後ろから来て颯爽と私のことを抜かす善の姿を追いかけながら必死に走った。
「こんなの……っ、勝てるはずない……っ」
息切れが激しい私と、余裕そうに立っている善。
勉強では私のほうが優位に立てていたけど、運動になると立場は逆になる。