無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
「それで、お願いは決まった?」
「決まった」
「……なに?」
「耳元で好きって言うか、ほっぺにキス」
「そのどっちかってこと……?」
私をまっすぐと見つめながら顔を緩ませて「うん」と答える善。
私にはどっちも難関だ。
たった2文字だけどこの口から1番出にくいであろう"好き"という言葉。
そして善の耳元で言わなきゃいけないというさらなるハードル。
次のほっぺにキスなんて、私からキスをするなんて口から火を吹くほど恥ずかしい。
ほっぺといえど、すぐ横には唇があるじゃない。
大本命の唇がすぐ横にあるんだと思うとそれだけで緊張して倒れてしまいそう。
……つまり、どっちにしても私は死ぬ気で挑まないといけないわけだ。
そもそもこれから善の両親と私の両親に付き合っていることを話すという高い壁がそびえ立って待っているというのに。
そんなの関係なしで、今私にこんな試練を与えてくる善の気が知れない。