無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

善は眉毛を下げて寂しそうな子犬の顔をする。
その顔に私が弱いことをわかってやってるでしょ……。



「お風呂は1人で入るんだから当たり前でしょ」

「まだ入らなくていいよ」

「……だって、誰かが入らないと後ろがつまっちゃうじゃない」

「ならいっしょに……」

「入りません」



なにを言われても強気でいる私に、善は笑いながらまたがってきた。
1秒前まではベッドに横になりながらも余裕で話していたのに、今やもう体が鉛のように重くてまったく動かない。



「強気な凛李もいいけど、かわいい凛李も見たいな」

「……それは、むずかしいんじゃないかな。かわいくなれないし……」

「凛李はくすぐられるの弱い?」

「え……」



くすぐられたことがあるのかもわからない。
だから、自分がくすぐられることに対して耐性があるのかもわからない……。

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