無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

私がなにも答えられないでいると……返事を待たずに善は私の脇腹を指でつついてきた。



「ちょ……っ」



思わず声が出てしまった。
……いや、あの、普通にくすぐったい。
これはだめなやつだって一瞬でわかった。



「だめ! くすぐったい!」

「……ふーん、そうなんだ」



なにかをたくらんでる感満載の善が片方の口角を上げたのを私は見逃さなかった。

そのあとすぐに善は私の脇腹を手でくすぐってきて、私が逃げ回ってもやめてくれなかった。
あまり声を出しても下にいるお母さんたちに気づかれてしまうと思い、必死に声を押し殺すものの……不意に漏れてしまう。



「ちょっ……、ほんとに、もうやめ……っ」



私がそう口にすると、善の手の動くスピードが少し弱まった。
あぁ、やっとやめてくれた……。

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