無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

チラッと横にいる善を見てみると、なぜか善は両手を頭の後ろで組んでまっすぐ前を見つめていた。



「どうしたの……?」

「……精神統一」



善は視線を変えず無表情のままそう言う。

こんなにいきなり精神統一?
いったいどういうこと?

気になると知るまで気が済まなくなる性格の私は、一旦起き上がって善のことを疑い深く見た。
いつもは善にジッと見つめられることが多いから、こうやって善のことをまじまじと見るのは変な感じがする……。

以前、寝ていると思っていた善を見ていたあの日以来かもしれない。



「なにか心が乱れることがあったの?」

「うん、ものすごく」

「え? 今? なに?」



人の背中に好き勝手にキスをしておいて、その間に心が乱れるってどういうこと?

変わらず善から視線を動かさないでいると、善は頭の後ろに両手を組んだまま上半身を私のほうへ向けてきた。

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