無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
「こっちに帰ってくるの?」
「いや、あと2年は海外にいるようなんだ」
「てことは……」
「善もいっしょにアメリカに来い。なにを学ぶにしても、いろんな刺激をもらえるからいいと思うぞ」
……まさかアメリカへのお誘いだとは。
日本に帰ってくるか、まだ海外生活が長引くという報告は予想していたけど……善を連れて行くのはまったく予想していなかった。
「お母さんも善といっしょに暮らしたいって言ってるし、卒業したらいっしょにアメリカに来なさい」
「……」
「いつまでも若菜さんちにお世話になるのもご迷惑だから、こっちに来る方向で先生にも話しなさい」
善はなにも答えてないけど、テーブルの下でこぶしをギュッと握っているのが私には見えた。
善のお父さんの少し威圧的な話し方に、すぐに返事をできない善の気持ちが少しわかる。
私のお父さんは優しいし子どもの気持ちを尊重してくれるけど、やっぱり社長という役職を担っているだけあって……話すときは少し緊張する。