無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
たまにしか会わないからかもしれないけど、お父さんとご飯を食べるときやお父さんがリビングにいるときは背筋がいつもより伸びる気がする。
「一応私からも担任の先生に話すか? 進路のこともあるだろうし1回話したほうがいいよな?」
「……いや、いいよ」
「どうしてだ?」
やっと善が口を開いた。
と思ったら、否定の言葉だったため善のお父さんは一瞬だけ眉間にシワを寄せた。
そういえば、善がどう答えるのかもわからない。
これからどんな進路を進みたいのか、なにをしたいのかーー私はまったく知らない。
関係ないと思って聞いていたけど、急に善がアメリカに行ってしまうかもしれないと思ったら……鼻の奥がツンとしてきた。
……だけど、すぐに安心することができた。
それは、善がテーブルの下で私の手をとって優しく握ってくれたから。
「俺はアメリカには行かない」