無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
善がそう言った瞬間……空気の色が変わった。
「日本で暮らすということか? 若菜さんちに甘えて暮らすのか?」
「高校を卒業したら1人暮らしする」
「……はっ、1人暮らし……? おまえが?」
善のお父さんは口角を上げながらも眉をひそめる。
バカにしたようなその表情に、私まで胸が痛くなった。
「なにもできないおまえが1人で暮らせると思ってるのか?」
「なにもできないから挑戦したい。今まで甘えられる環境で生きてきたから、やらなきゃいけない環境で生活したい」
「……金はどうする。家具や家電もそろえなきゃいけないし、そもそも家賃だって毎月かかるんだぞ。それは親の私たちに払えと言うのか?」
「自分でなんとかする。引っ越しに使う金はバイトして貯めてる」
「……前から決めてたってことか」
「アメリカへの転勤が決まる前から、高校を卒業したら1人暮らししようと思ってた」