無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

「大学はどうする? 通いながら働いてその金で生活していけると思ってるのか?」

「……大学には行かない」

「……なんだと?」



善のことを鋭く睨む善のお父さん。



「カフェ経営に興味がある。今バイトしてるカフェがきっかけで紅茶が好きになって、いつかはカフェを経営したいと思ってる」

「……大学にも行かずにそんな夢だけ持ってたって仕方ないだろ。考え直しなさい」

「これが考えた結果。大学に行くことだけがすべてじゃないと思ってるから」



これ以上お父さんと話しててもらちが開かないと思ったのか、善はもうそれ以上なにも言わずに席を立ち、出ていってしまった。

せっかく頼んだのに残されてしまったお寿司たち。



「なんだか、重い空気にしてしまって申し訳ない。お寿司を残してもだめになってしまうし、食べよう」



善のお父さんはさっきと打って変わって、ニコッといつもの笑顔を見せた。
本当は今すぐにでも善のところに行きたいけど、少しの間は1人きりにさせてあげたほうがいいかもしれない。

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