無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

私もそうだった。
誰かに相談するのって、勇気がいるし気を使う。
自分のために時間を割いていっしょに考えてくれるって……普通に考えたらかなりの労力がいるはず。

だけど、今日相談される側の立場になってようやくそんなことはないんだと気づくことができた。

人によってちがうのかもしれないけど、大切な人が悩んでいたら真っ先に話を聞いてあげたい。
少しでも荷物を持ってあげたい。

善のお父さんがああいう感じでも、善が話したことによって少しスッキリしたんだとわかり、私も気持ちが楽になった。



「お父さん、わかってくれるといいね」

「父さんが認めてくれないのは想定してた。高校を卒業あとにアメリカに来させたがってるのもわかってた。だから、認めてくれないとしても俺の気持ちは変わらない」

「……私は、そんな善を応援するよ。倒れないように後ろからしっかりと支えるから」

「うん。ありがとう」



善はそう言って、後ろから私のことを抱きしめてきた。
後ろにいるからどんな顔をしているのかわからない。
……だけど、想像はできた。
だから振り返らなかった。

言葉では強がっても、善の心が傷ついて苦しいんだろうなと抱きしめてきた弱々しい腕から伝わってきたから……。

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