無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

「そうだ、善は今日バイトなんだよな?」

「そうですね」

「私といっしょに行ってくれないか?」

「……え?」



突然のお誘いにおどろきを隠せない。
どういう風の吹き回し……?



「私1人でコソコソと行ったら、善がいやがるだろ? 凛李ちゃんがいれば許してくれると思うんだ」



なるほど、そういうことか。
つまり、善のお父さんは善のことを知ろうとしてくれてるってことなのかな……。
カフェでバイトしている息子の姿を見てみたいって思ったってことだよね。

それなら、断る理由はない。



「勉強が平気だったらでいいんだけど……」

「全然大丈夫です。行きましょう、支度してきますね」

「あぁ、うん。ありがとう……」



そうと決まれば、気合を入れて行かなきゃ。
今日こそ、善とお父さんが仲直りするための重要な日になるにちがいない。

しかし、オシャレな洋服を持っているわけがない。
メイクも自分でしたことない。

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