無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
「それなら、ウバにしてみる? 世界三大紅茶の1つだし、色、香り、味のバランスがよくてまろやかで飲みやすいよ」
「うん。じゃあ、それにする」
大好きな紅茶の説明をして少しほぐれたのか、善はいつものようにタメ口で話してきた。
善のお父さんは善にオススメされた"ケニア紅茶"に決め、善は注文をとるために他のテーブルへと行ってしまった。
注文した紅茶がきて、善のお父さんはゆっくりと口に入れた。
普段コーヒーを飲むと言ってたから口に合わなかったらどうしよう……せっかく善がオススメしてくれた紅茶なのに……。
そんな私の心配をよそに、善のお父さんは飲んだあと私のことをまっすぐと見てきてーー「おいしい」と声を漏らした。
言うつもりはなかったのに、心の声がつい出てしまったという感じだった。
私が選んだわけでも淹れたわけでもないのに……善のお父さんが紅茶をおいしそうに飲んでいるのを見て、ガッツポーズをしたいほどうれしかった。