無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

善は見てるかな……?

そう思って探してみると、善はカウンターのところにいて、私……ではなくお父さんを見ていた。
どうやら善も、どういう反応をするのか気になっていたらしい。
紅茶を味わっているお父さんを見て、少しはお父さんへの怒りを小さくしてくれたらいいな……。



「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」



おいしく紅茶を味わった私と善のお父さんはお会計を済ました。
私も払おうとすると、善のお父さんに「私が連れ出したんだから、お礼と言ったらなんだけど払わせてくれ」と言われてしまったので、私はお言葉に甘えることにした。

レジの担当もたまたま善で、私はお会計も終わったことだしと善に背中を向けた。
しかし、善のお父さんはその場から動かなかった。



「おかげでおいしかったよ、ありがとう」

「……それならよかった」



2人がしたのはそんな短い会話だったけど、2人の間にはもう険悪なムードは一切なかった。

< 336 / 390 >

この作品をシェア

pagetop