無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
ふと、中を見てみると……そこには、善と善の担任の先生が向かい合ってイスに座り、話をしていた。
めずらしく真剣な面持ちの善を見て、私は反射的に理科室の壁に隠れて聞き耳をたてた。
「俺の知り合いがたまたま紅茶に詳しくて、県外でカフェを経営してるんだ。もし働きながら学びたいなら、そこで働いてみるのはどうかなと思ってさ」
「……昨日話してたやつですよね」
「そうそう。紅茶を学ぶためにイギリスで暮らしてたこともあるし、紅茶ソムリエの資格も持ってる。柊木にとったら最高の師匠だと思うんだけど」
「考えみます」
「あぁ、考えみてくれ」
紅茶に詳しい人がいる下で働けるかもしれないってこと……?
イギリスで暮らしていたり、紅茶ソムリエの資格を持っていたりと、紅茶に興味を持った善にとったら最高の学ぶ場だろう。
……それなのに、善はどうして乗り気じゃないんだろう。
疑問に思っていると……私の目の前に理科室から出てきた善が突然現れた。