無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
私は……ただ、善がしたいことをしてほしかった。
私の人生は私だけのものだと善が教えてくれたから。
善にも善だけの人生を歩んでほしいと思っただけだった。
「凛李は、俺と離れてても全然平気ってことか」
私は向ける……怒った顔ははじめてかもしれない。
眉間にシワをよせることはなく、半分あきれ気味で私のことを見下ろす。
「別に、そういうことじゃ……」
「俺にとって夢も大事だけど、なにより凛李のことが大事なんだよ」
「私だってそうだよ。でも、せっかくのチャンスを逃してほしくないの。だって、離れていても長い期間会えないわけじゃないでしょ? 会おうと思えば会える距離なんだし……」
「……俺は……」
「……」
「たぶん、凛李がそばにいないと無理だと思う。会いたいと思ったときに会える距離じゃないと耐えられない」
最後に善は表情を一切変えずにそう言い放ち、私の横を通りすぎた。
どうすれば正解だったのか……もはやそんなことは大事ではない。
私が善をひどく傷つけてしまった、という事実に変わりはない。