無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

「それは、なんの涙?」



善はそう言って笑いながら優しく涙をぬぐってくれた。



「わがらない……」

「凛李が誰かさんのせいで倒れそうだって、瑠月ちゃんが連絡くれたんだよ。だから、急いで帰ってきた」

「ぞ、ぞうだったの……?」

「それに、俺も限界だったし」



善は私の肩に腕をまわし、涙が止まらない私をなるべく人目から守ってくれた。

久しぶりに善の匂いがして、心身共に落ちつく。



「会いたかったよ、すごく」

「……わ、わだじも」



鼻声でまったくかわいくない声。
でもそんなことは気にならない。

今、となりに善がいる。
こうして話すことができる。
……その事実が、とても幸せなのだ。



「とりあえず、帰ってから話そうか」



善がそう言ってくれたため、私はとにかく家に着くまでに涙を止めた。
瑠月は今日は友達の家へ泊まりに。
お母さんからは【買い物に行ってきます】とメッセージがきてた。
お父さんはまだ仕事で帰ってきていない。
そのため、家には誰もいなかった。

私たちは善の部屋で話すことにした。
私を落ちつかせるために、善は私をベッドのふちに座らせ、そのとなりに善は座った。
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