無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
「開けた経験は……ある?」
頼んでおいてあれだけど、これで善が初めてだと言ったらちょっと躊躇するかもしれない。
「中学のときにね。自分のと刀夜の」
自分のも開けたということにおどろきを隠せないけど、それだけの経験があれば十分安心できる。
……中学のとき、というのがいろんな意味で引っかかるけど、これは個人の自由だからどうこう言うつもりはない。
「いつ開ける?」
「えっと……今、お願いします」
「うん。凛李のやると決めたらすぐ行動に移すかっこいいところ、ほんと好き」
「ちょっ……」
「じゃあ、氷持ってくる」
「氷……?」
「耳たぶを冷やして麻痺させるの。麻酔みたいなもん。それで刺したら痛みも感じづらい」
「なるほど……」
善は氷を取りに部屋を出ていった。
私は待っている間、なぞにだんだんと緊張してきてしまい、直前になって弱気になってきた。