無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
小さなお皿に氷を入れて持って帰ってきた善は、氷をテーブルに置き、私のとなりに座ってきた。
そして息がかかりそうなほど近くにきて、善は私の耳たぶを触ってなにかを確認しだした。
くすぐったくて、思わず体が反応してしまう。
「薄いからたぶん膿まないだろうし、開けやすそう」
「じゃあ、そんなに痛くない?」
「少しは痛いよ」
「……だよね」
善はピアッサーを手に取り、私の耳にかざしてシミュレーションをしている。
「もう開けていいの?」
「……うん。お願い」
善は「了解」と言って、私の耳に氷を当てる。
ある程度冷えたところで、次にピアッサーをセットした。
「ま、待って……っ。心の準備させて」
「やめとく?」
「やめない。今日開ける。だけど、針を刺すって思うだけでどんな痛みなのか想像できないから怖くて……」
実をいうとこの日を楽しみにしていた。
今まで、髪の毛を染めたりコンタクトを入れたり……そういう挑戦をしてこなかったので、今日は私の人生の大イベントでもある。