無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

「俺にしがみついていいよ」



善からの提案を私はすぐに実行に移した。

両手はピアッサーを持っているので、邪魔にならないように善の服のすそをギュッとつかんだ。
それを見た善は、「そこなんだ」と笑って、再び私の耳にピアッサーをセットした。

ピアッサー自体にピアスがついているため、穴が開いたと同時にピアスをした状態になる。
しばらくは外さずにつけたまま過ごして、穴が安定すれば好きなときにつけたりとったりしていいらしい。

事前にネットで予習済みだ。



「いくよ」



善のその声を聞いたあとすぐに、パチンッと音がした。
そして、耳に一瞬だけ痛みが走る。
そのあと耳たぶだけが熱を持って、ドクンドクンと脈を打ってるのがわかった。



「お、終わり……?」

「右耳はね。どう? 痛い?」

「少しだけ。でも思ったより痛くなかった」



善は穴を開けた右耳をジッと見て、「大丈夫そうだね」とつぶやく。

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