無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
善からの"かわいい"を聞いてしまうと、怒っていてもすべてどうでもよくなってしまう。
……これでは根本的な解決にならないとわかっているけど、結局は諦めるしかないのだ。
「とにかく、真剣に穴を開けることに集中してください」
「穴を開けるって……っ」
「ちょっ、今度は笑わないでよ!」
「わかったわかった。穴を開けることに集中するよ」
ピアスを開ける=穴を開ける、でしょ?
なにもまちがってないのにどうしてそんなに笑うのよ……。
紆余曲折あったが、無事に左耳にもピアスがついた。
痛みは右耳よりもなくて、終わってしまえばこんなものなのかと思った。
なにごともやってみないとわからない。
恋愛もそうだ。
自分にはむずかしい、自分には向いていない……そう思って恋をすることに臆病になっていた。
そんなときに善と出会って、気づいたら善に惹かれている自分に気づいた。
その気持ちに蓋をしようとも思った。
好きになる権利もないと思っていた。