無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

善の口から言葉が出てくれば出てくるほど、私の体は熱くなる。

冷たいプールの中に浮かんでいるはずなのにどうしてだろう。

善の瞳が熱を帯びている気がするのは……私だけなのかな。



「凛李のことを他の男に見てほしくない」



今日の私を見てほしくないってどういう意味……?

恋愛なんてしてこなかったから、善の言ってることが理解できない。



「似合わなすぎて変だから見ないでほしいってこと?」

「は?」

「え?」

「さすが真面目ちゃんだね、発想が違うわ」

「……じゃあ、どういうことなの?」

「だーかーら……」



善は呆れ気味でそのあとなにかを言おうとしたタイミングで、刀夜くんが「小腹空いたから、なんか食おうぜー」と声をかけてきた。

なので、結局そのときに善から真相を聞くことはできなかった。

今すぐ聞きたい……!
私を見てほしくない意味を!

スッキリしないままお昼を美味しく食べられる気がしない。

善もイライラしているのか、浮き輪のヒモをつかみ、すごい勢いで私を浮き輪ごと引っ張る。

水がひざ丈しかなくなるほど浅いところに来たので、私は浮き輪を外して片手でつかんだ。

その瞬間、善に再び浮き輪を頭から被せられた。

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